この事例の依頼主
30代 女性
相談者は、30代の女性Aさん。会社の上司であるXさんと飲み会の帰りに都内のラブホテルで不貞行為をしてしまった。その後のLINEのやり取り(性行為をしたことが分かるようなやり取り)をXさんの妻のYさんがXさんの携帯電話を見て、不貞行為が発覚した。妻のYさんは弁護士に依頼して、Aさんに対して、500万円の慰謝料を請求する内容証明を送ってきたことから、Aさんは、びっくりして当職のところに相談にお越しになられました。
本件では、300万円の慰謝料を請求して来ておりますが、当職としては、最終的な和解金額を釣り上げるために最初のいわゆるジャブとして、高額な慰謝料の請求をしてきているのだなと直感的に思いました。また、本件については、①継続的な不貞関係にあったわけではなく、1回限りの不貞行為であることや、②その後、夫のXさんはYさんに謝罪して離婚などの大事に至っているわけではないこと(婚姻生活に対する打撃は小さいこと)、③ラブホテルに積極的に誘ったのは上司であるXさんであることなどを考えると、慰謝料の総額としては100万円には満たないはずだと判断をしました。当職が代理人に就任をして、相手方の代理人と交渉したところ、相手方の代理人としては、最低総額150万円は支払ってもらわないと、訴訟を提起するという話をされました。当職としては、裁判をしても100万円を超えることはないと思っていたことから、依頼者のAさんと相談をした上で「裁判をするのであれば、仕方がないと思います。訴訟を起こしてください」と交渉を打ち切りにしました。そうしたところ、Yさんの代理人から訴訟提起がAさんに対してなされました。訴訟では、裁判所から和解を検討して欲しいという要請があったことから、当職としては、「今回の不貞行為は、被告のAさんとXさん(不貞相手)の2人のYさんに対する共同不法行為であることから、本来は、損害賠償は2人でYさんにするべきものである。もちろん、共同不法行為の場合には、Aさんが全額をひとまず負担をした上で、AさんとXさんとの間の負担割合は、AさんとXさんとの間で後で取り決めて求償することになるのが筋であるが、Aさんが全額ひとまず奥さんのYさんに払って、Aさんが後からXさんから半分程度を返してもらうのでは、2度手間であるから、今回の慰謝料の適正な金額の半分を負担をするという和解であれば、応じる」という話をしました。今回の慰謝料の適正な相場からすれば、総額100万円はいかないと考えておりましたが、仮に100万円をAさん(被告)がYさん(原告)に払ったとしても、Aさんは、その半分の責任は最低限、Xさん(不貞相手)に負ってもらえるはずですから、最低50万円は、回収できるはずです。そうであれば、最初から「50万円で手を打つことはできないか」ということで話をしました。相手方の代理人としては、最低150万円は回収できると思って、訴訟を提起したようで、最後まで50万円での和解に応じることには消極的でしたが、実際にこのまま判決になったとしても、総額100万円未満の慰謝料が認定されるにすぎず、仮に、それをAさんが支払った場合には、半分以上の金額をAさんはXさんから回収できることになる(例えば、総額80万円であれば、50万円程度をXさんから回収すれば、Aさんの最終的な負担は30万円で済む)ので、和解に応じるつもりがないのであれば、判決での解決も良いと考えておりました。判決での解決になれば、総額としては、Yさんの家計(XさんとYさんの夫婦の家計)にとっては、マイナスになってしまいます。そのことについて、当職からも説得し、また、裁判所からも相手方の代理人に説得してもらった結果、しぶしぶ相手方は受け入れてくれて、裁判上の和解で50万円で和解が成立しました。
不貞行為の慰謝料については、高額な金額を請求できると考えている人が多くおられます。ただ、慰謝料の金額は、①不貞行為の期間、②不貞行為の回数、③不貞の結果の夫婦関係の悪化の程度、④その他悪質性などを考慮した判断します。また、不貞行為は、2人の合意によって行われるものですから、1人だけの責任ではありません。すべての1人で背負いこむべきものではないと思います。ですから、当事者を巻き込んできちんと3者間で解決するべき者であると思料致します。今回は、400万円を請求して、最終的には50万円の慰謝料で済んでいますから、350万円も減額をすることができました。「400万円も請求されているから、せめて半額の200万円くらいは払ったほうがいいのかな」と安易に考えて支払ってしまう人もいるかと思います。まずは、弁護士に相談をして適正な慰謝料金額を算定してもらい、その上で、どのように対応をするかを決めてください。不貞の責任を1人だけで背負い込む必要はありません。